雨のように振り続ける孤独 秋霖 門地かおり〜孝助
- 作者: 門地かおり
- 出版社/メーカー: リブレ
- 発売日: 2015/09/15
- メディア: Kindle版
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現在手に入るのはこちらデジャブ。(短編集の再録版)の方。「秋霖」は一番最後に掲載されている。
- 作者: 門地かおり
- 出版社/メーカー: ビブロス
- 発売日: 1997/06
- メディア: コミック
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絶版だがこちらのコミックスにも収録されている。
初見では気付かないさりげない闇、足元から冷たく這い寄ってくるような怖ろしさ、それでいて純粋無垢でただひたすらにまるで赤子のように光に焦がれている…
「生徒会長に忠告」シリーズや短編でしばしばそんなキャラクターかすっと現れる。
江戸時代のキリシタン弾圧を題材にした短編「秋霖(しゅうりん)」もその中の一つだ。
幕府によるキリスト教信者の弾圧が行われている江戸時代。
孝助と良市は親方様の命を受けて不穏な芽を摘み取るべく長崎へと出発する。
しかし孝助は隠れキリシタンであり、良市を裏切りその身を拘束してしまう。
そして孝助は幕府の仲間であり良市の恋人・暁に追われる身となるが…
そもそも孝助はなぜキリシタンになったのか。
昔から想いを寄せる良市には暁という恋人がいて、自分が入れる隙などない。自分を大切にはしてくれているが、本当に必要とはしてくれていない。
幕府の命で人を殺め、殺めた人間は誰かに必要とされていたと知り、誰にも必要とされていない自分が人を殺める資格はないと気付く。
ただただ、孤独だけがそこにあったのだ。
秋の涼しさの中振り続ける雨のように。
孝助の心にはいつも雨が降っていたのだろう。
良市や暁が気付かぬうちに雨は振り続け、耐えきれない量になり、やがて孝助は自殺する事を決意してしまったのだった。
キリストの教えを守る為、またささやかな復讐として暁に「わざと殺される」という自殺方法を選んだ孝助。
一度この作品を読み終えた後、二度目に最初から読み、孝助が最初から暁に殺される為に工作をしていた事がわかりゾッとした。
穏やかで心優しく、最期まで激情を表に出さなかった孝助の闇深い内面が怖ろしい。
およそBLのラブのかけらもないような悲しい結末だが、救いのないバッドエンドではないように思う。
孝助はキリスト教に救いを求め、他殺されるという死に方を選択して漸く孤独から解放されたのだ。
孝助はヤンデレタイプ別にすると依存型、そしてやや神格化型も兼ねているように思う。